腰痛の悲劇 ―episode4―

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後輩との久しぶりの再会が、地獄の引き金に…

 会社には行かねば。痛み止めを飲み、コルセットを巻いて、気合いでスーツに袖を通す。鏡の前で立ってるだけで、冷や汗。とはいえ2日休むのも気が引けるので、なんとか気合いを入れて家を出た。

 電車の揺れが、意外と腰に響く。座れた時はホッとした。オフィスに入ると、みんなが「大丈夫ですか?」って気を使ってくれる。ありがたい。昨日溜まっていた仕事を午前中に片付け、ひと段落しホッとしていた瞬間、事件はランチの時にやってきた。

 後輩の高野が、背後からやってきて「先輩、お久しぶりですー!元気してましたー?」と笑いながら、僕の腰をポンッと叩いてきた。

その瞬間、視界が真っ白になった。

 息が止まるような、衝撃。声にならないうめ声をあげて、デスクにつかまった。顔面蒼白だったと思う。高野は「えっ大丈夫です!?…なんかすみません!!」っと焦ってたけど、もうそれどころじゃない。

 午後はずっとトイレでうずくまり、上司に「ちょっと早退させていただきます」と頭を下げた。家に戻った頃には、ほぼ四つん這い。

「こんな悲劇ってあるのか…」と呟いた自分の声が、あまりにも虚しかった。

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