腰痛の悲劇 ―episode2―

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「夢の国」が「地獄の時間」に…

 朝、目を覚ました瞬間、昨日よりも酷い腰の痛みに襲われていた。立ち上がるのも一苦労。ベッドの端でうずくまりながら、深呼吸して痛みをごまかしてた。けど、隣で嬉しそうにメイクしてる妻の姿を見て、「行かない」なんて言えるわけがなかった。

 ゆっくり、慎重に、動きはまるでスローモーション。だけど妻はいつものテンションで、「〇〇のアトラクション、朝イチで行こう!」なんて言ってくれる。無理だって、言えるはずもない。「ちょっとゆっくり歩こう」ってごまかしながら、ゲートを潜った。

 せっかくディズニーに来たんだから“楽しまなきゃ損”だよな〜と心では思っているが、体がついてこない…。妻が走ってパレードの場所取りに向かった瞬間、僕は動けず、ベンチに腰掛けて冷や汗をかいてた。「ごめん、先行ってて」って笑ったけど、心の中では、情けなさでいっぱいだった。

 昼過ぎには、とうとう足も痺れ始めて、痛み止めも全く効かなくなった。妻はずっと気を使ってくれてたけど、僕が無理してるの、気づいてたんだと思う。帰りの電車の中、彼女が手を握ってくれて、「ありがとう、来てくれて」と小さく呟いたとき、涙が出そうになった。

 夢の国は、僕にとってはただの苦行だった。でも、彼女の笑顔が見られた。それだけが、救いだった。

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